LAYER 2 — 2000〜2004

ブロードバンド化

ADSLが普及し、接続が「つなぐもの」から「つながっているもの」へ変わった層。 常時接続と定額制でページの重さの制約が緩み、Flash・動画・大きな画像が現実的になった。 同時に書き込みのコストが下がり、掲示板とブログが爆発的に広がった。

ADSL常時接続Flash巨大掲示板ブログネット通販ネットオークション

この層で何が変わったか

この層の構造変化はひとつに集約できる。接続が従量制から定額・常時接続へ移ったことである。 つないでいる時間を気にしなくてよくなった瞬間、ユーザーの行動が変わった。目的を決めてから つなぐのではなく、つながったまま何となく見る、という使い方が可能になった。 この変化は三つの帰結を生んだ。第一に、ページの重さの制約が緩み、Flashによる演出や大きな画像が 実用になった。第二に、書き込みの心理的コストが下がり、掲示板の書き込み量が跳ね上がった。 第三に、更新を前提にした個人発信の形式としてブログが定着した。工事中ページや不定期更新が 当たり前だった個人サイトの世界に、日付順に積み上がるという規律が入ってきたのがこの層である。 次の層との境目は2005年に置いた。 回線の側では2004年以降も光ファイバへの移行が続くが、この層を終わらせたのは回線ではない。 変わったのは場所の作り方のほうで、2004年に日本のSNSが相次いで立ち上がり、 翌年から発信の単位がサイトからアカウントへ移っていく。 回線が太くなることで起きる変化は、この層でほぼ出尽くしていた。 逆に言えば、この層は制約が外れたときに何が起きるかを一度に見せた期間だった。 重いものが置けるようになり、書き込みが増え、更新の形式が定型化する。 次に動くのは技術ではなく、人の集まり方のほうになる。

この層のデザイン言語

ポータル型の高密度レイアウトグラデーション小型バナーFlashイントロ3カラム

この層の年

2000一年で利用者が7割増えた年2000年末のインターネット利用者数は4,708万人で、前年から74.0%増えた。 ただし接続の主流はまだ電話回線で、多くの人が23時のテレホーダイを待ってつないでいた。 「みんなが使い始めたのに、まだ使い方は昔のまま」という、ねじれた一年。2001常時接続がまだ贅沢だった年2001年末の利用者数は5,593万人、人口普及率44.0%。ADSLが本格的に広がり始め、 「つなぐ」インターネットから「つながっている」インターネットへの移行が始まった年。 ただし移行の途中であり、環境の差が体験の差に直結していた。2002半数を超えた年に、半数はまだ従量制だった2002年末の利用人口は6,942万人、人口普及率54.5%で初めて半数を超えた。 しかし自宅のパソコンでブロードバンドを使っている世帯は29.6%にとどまり、 ダイヤルアップのほうがまだ多い。使う人は増え、つなぎ方は追いついていなかった年である。2003つなぎ方が入れ替わった2003年末、自宅パソコンの接続はダイヤルアップ38.4%に対して常時接続61.7%。前年から1年で 17.7ポイント動いた。インターネット利用人口は7,730万人・普及率60.6%。 「つなぐ」という動作が生活から消え始めた年である。2004発信の場所が、サイトからアカウントへ動き始めた年2004年末の利用者数は7,948万人、人口普及率62.3%。国民の6割以上がインターネットを使う状態になった。 この年にmixiとGREEが始まり、自分でサイトを作らなくても発信できる形式が日本に入ってきた。

この層の主役

この層の画面

実際の画面の複製ではなく、当時の構成を説明するために作成した模式図です。

オンライン書店の商品ページ800px
検索窓(和書/洋書/すべて)
書影
書名/著者/出版社/発売日
価格(和書は定価。洋書は割引率つき)
在庫あり ── 24時間以内に発送
カートに入れる
目次・内容紹介
書評(雑誌からの転載/出版社の概要)
カスタマーレビュー(読者が投稿)
この本を買った人はこんな本も買っています(※ 開設から2〜3か月後に稼働)
2000年の画面構造実店舗の棚で分かるのは、書名と表紙と値段と厚みくらいである。 この画面はそこに目次・内容紹介・雑誌の書評・読者のレビューを積み上げた。 在庫の有無と発送の目安まで、買う前に画面に出ている。 値段の欄が二種類あるのが日本固有の事情だった。 和書は定価での販売、洋書は最大30%の割引。 同じ店の中で、扱う商品によって値付けの自由度が違う。 値引きで競えない側では、上に積んだ情報の量が競争の中身になる。 最下部の推薦は、開設時には動いていない。 購買履歴が溜まるまで実装は2〜3か月後になる、と当時の記事に書かれている。 推薦は最初から在る機能ではなく、利用者の行動が材料になって初めて動く。 この一行が、後の日本のインターネットで起きることを先に説明している。 これは実際の画面の複製ではなく、構成を説明するための模式図である。実店舗の棚では見えない情報を、1ページに全部並べる※ 実際の画面の複製ではなく、当時の構成を説明するために作成した模式図です。
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トピックス
オークション
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フッタリンク
2003年の画面構造常時接続の普及で1ページに載せられる情報量の上限が上がり、3カラムが完成した時期。 左にカテゴリ、中央にニュースと検索、右にオークションと広告という配置は、 以後10年近く日本のポータルの標準になる。現在の目には過密に見えるが、 横に広く縦に短い画面で、マウスで細かいリンクを正確に押せることが前提だった。1024×768 が標準になり、横幅の使い方が一気に変わった※ 実際の画面の複製ではなく、当時の構成を説明するために作成した模式図です。
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ジャンル
ジャンル一覧
特集バナー
新着ショップ
ランキング
出店案内
1999年の画面構造商品を横断して比較するのではなく、ジャンル → 店 → 商品という順路が優先されている。 「知らない相手から買って大丈夫か」という当時の警戒に対して、 店を選ばせるという設計で答えていた。フッタ近くに出店案内があるのは、 買う人と同じくらい売る人を集める必要があったからである。※ 実際の画面の複製ではなく、当時の構成を説明するために作成した模式図です。
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カテゴリ ヘルプ マイ・オークション
商品タイトル
出品画像
現在価格/残り時間/入札件数/出品者
入札する
入札履歴
商品の説明(出品者が書いた文章)
出品者の評価を見る
2001年の画面構造最も目立つ位置にあるのは写真でも説明でもなく、現在価格と残り時間である。 通販のページが「買うかどうか」を判断させる構成なのに対し、 ここは「今いくらで、あと何分か」を伝える構成になっている。 出品者の評価へのリンクが商品説明と同じ重みで置かれているのは、 相手が事業者ではなく見ず知らずの個人だったため。※ 実際の画面の複製ではなく、当時の構成を説明するために作成した模式図です。
Flash作品を置いたページ800px
サイト名 ── 作品置き場
※ 再生には Flash Player が必要です(お持ちでない方はこちら)
作品の表示領域(固定サイズ・読み込み中の表示から始まる)
再生 / 停止 / 音量
作品一覧(題名/容量/更新日)
※ 容量が大きいため、回線の速い環境でご覧ください
掲示板 / リンク / 作者について
2003年の画面構造一覧に容量が書いてあるのがこの形式の性格を決めている。 作品は自分のサーバに置き、読み込みの負担も転送量の費用も作った側が持つ。 何メガバイトあるかは、見る側にとっては待ち時間、 置く側にとっては請求額だった。 冒頭の但し書きも欠かせない。再生にはプラグインが要り、 入っていない環境では何も表示されない。 作る側は常に「見られない人がいる」ことを前提に置いていた。 この一文が要らなくなった代わりに、後にプラグインごと消えて全部が見られなくなる。 表示領域が固定の大きさで置かれているのも当時の作り方で、 画面幅に合わせて伸縮させるという発想がまだ一般的でない。 作品の側が寸法を決め、閲覧環境がそれに合わせていた。 これは実際の画面の複製ではなく、構成を説明するための模式図である。作品の表示領域は固定の大きさで作る。画面に合わせて伸縮させる発想が無い※ 実際の画面の複製ではなく、当時の構成を説明するために作成した模式図です。

この層で始まったサービス

この層のネット文化

1997 — 2012着メロ携帯電話の着信音を、自分で選んだ曲に変える文化。 はじめは専門誌を見ながら自分で打ち込むものだったが、公式メニューから買えるようになり、 日本のネットで個人が少額を払う習慣を最初に作った領域になった。1987 — 2008チャットルーム同じ時刻に集まった人どうしが、短い文を即時にやりとりする「部屋」。 パソコン通信の機能として始まり、個人サイトが自分の部屋を置く形へ広がった。 通信料が定額になる時間帯に人が集まるという、日本特有の集まり方をした場所でもある。1997 — 2008直リンク禁止他所のサイトの画像やファイルを自分のページから直接呼び出すことを禁じる注意書き。 個人サイトの「お約束」ページにほぼ必ず書かれていた。マナーの問題に見えて、 実際には転送量が有限で、しかも呼ばれた側だけが払うという料金の構造から生まれている。2000 — 2008Flash文化Flash で作られた短いアニメーションや音楽作品を、個人が公開して見せ合っていた文化。 常時接続が普及した2000年代前半に、ブラウザだけで動く映像表現として広がり、 Flash Player のサポート終了(2020年12月31日)で再生手段ごと失われた。1996 — 2008キリ番アクセスカウンタが10000などのきりのいい数字になったとき、その訪問者が申告して 記念のイラストや文章をもらう習慣。個人サイトの訪問者数が「数えられる規模」だった時代に、 数字そのものをイベントに変えた文化。1996 — 2006工事中ページ中身がまだ無いページに「工事中」と書いて公開しておく習慣。作業員やバリケードの アニメーションGIFが添えられることが多かった。未完成であることを隠さず、 むしろ表示していたという点に、当時のサイトの位置づけが表れている。1998 — 2010メールマガジン登録した購読者へ定期的にまとまった内容のメールを配信する仕組み。「メールマガジン」という呼称自体が 1990年代末に広まった和製英語で、英語圏では newsletter と呼ばれる。 個人が定期刊行物の発行人になれた、日本のネット史で最初の形式だった。1996 — 2007相互リンク個人サイト同士が互いにリンクを張り合う習慣。掲示板やメールで申請し、 了承を得てから張るという手続きを伴うことが多かった。検索エンジンが弱かった時代に、 サイトを見つける主要な経路そのものだった。1995 — 2004テレホタイムNTTのテレホーダイが適用される23時から翌朝8時までの時間帯。この9時間だけ通信料が定額になるため、 日本中のネット利用者が同じ時刻に一斉に接続した。掲示板もチャットも23時に人が現れるという、 料金制度が文化を作った例。1998 — 2005テキストサイト文章そのものを読ませることを主目的にした個人サイト。画像も動画も置けない、 あるいは置くと重すぎるという条件の下で、文体と改行と間の取り方だけで 読ませる技術が磨かれた。2000年前後の数年間に集中して現れた形式。2003 — 2012トラックバック別のブログへリンクを張ったときに、相手へ「あなたの記事を参照した」と通知する仕組み。 リンクされた側は参照している記事の一覧を自動で作れた。 ブログ同士が相互に反応し合う光景を作った機能で、いまはほとんど残っていない。

出典

  1. 公的資料平成14年版 情報通信白書 「1 我が国におけるインターネットの着実な普及」(総務省)
    平成13年末のインターネット利用者数5,593万人、人口普及率44.0%
    確認日: 2026-08-15