チャットルーム
同じ時刻に集まった人どうしが、短い文を即時にやりとりする「部屋」。 パソコン通信の機能として始まり、個人サイトが自分の部屋を置く形へ広がった。 通信料が定額になる時間帯に人が集まるという、日本特有の集まり方をした場所でもある。
なぜ当時あたりまえだったのか
掲示板やメールが、書いた時刻と読まれる時刻がずれることを前提にした仕組みなのに対し、 チャットは同じ時刻にその部屋にいることを条件にする。 三人以上が集まる仮想的な会議室という形式が基本で、 二者間の連絡を主とするメッセンジャーとは区別されていた。 日本でこの形式が強く根づいた理由は料金にある。 接続が従量課金だった時代、多くの個人利用者は定額になる深夜の時間帯にしかつなげなかった。 つまり全員の接続時刻が制度によって揃えられていた。 同時刻に人がいることが前提のチャットは、この揃い方が無ければ成立しない。 部屋に入って誰もいなければ終わりであり、逆に23時を過ぎれば必ず誰かがいた。 始まりはパソコン通信の機能としてで、NIFTY-Serveでは「CBシミュレータ」、 PC-VANでは「OLT(On-Line Talk)」と呼ばれた。 Webが普及すると、個人サイトの管理人がCGIのチャットを設置して自分の部屋を持つようになり、 掲示板と並ぶ標準装備になっていった。
なぜ消えたのか
常時接続が普及して、全員が同じ時刻にいるという条件が崩れた。 いつでもつながっているなら、わざわざ時刻を合わせて集まる理由がない。 同時に、携帯電話とスマートフォンが常に手元にある状態を作り、 「部屋に行く」という動作そのものが不要になった。 形式が消えたわけではない。グループチャットもボイスチャットも今のほうが盛んである。 失われたのは入ると誰かがいるかもしれない、という賭けのほうだった。 現在のチャットは特定の相手や特定の集団と結びついており、 誰が来るか分からない部屋にとりあえず入ってみる、という使い方はほとんど残っていない。
今でいうと何か
Discord のボイスチャンネルやライブ配信のコメント欄。 ただし当時は部屋の側に人が集まっており、いまは配信者や集団の側に人が集まる点が違う
※ 完全に同じものではありません。機能や文化の系譜として近いものを挙げています。