Flash文化
Flash で作られた短いアニメーションや音楽作品を、個人が公開して見せ合っていた文化。 常時接続が普及した2000年代前半に、ブラウザだけで動く映像表現として広がり、 Flash Player のサポート終了(2020年12月31日)で再生手段ごと失われた。
なぜ当時あたりまえだったのか
三つの条件が同時に揃っていた。 第一に、回線が太くなった。ADSL の普及によって、数百KBから数MBのファイルを 待たずに読み込めるようになった。従量課金の時代には成立しない形式である。 第二に、当時のブラウザには動画を再生する標準の仕組みが無かった。 現在なら video タグを置けば済むが、当時は再生に専用のプラグインが要る。 Flash Player はその中で圧倒的に普及しており、 「ほぼ全員の環境で動く」唯一の映像表現の手段だった。 第三に、作る道具が個人に手が届く価格だった。ベクター形式なのでファイルが軽く、 絵が描けなくても図形と文字だけで作品が成立する。 音楽に合わせて文字が動くだけの作品が大量に生まれたのは、この性質による。 結果として、映像を作って公開するという行為が、はじめて個人の趣味の範囲に入ってきた。 作品を集めて公開する「倉庫」と呼ばれるサイトが各所にでき、 そこを巡回するのがひとつの遊びになっていた。
なぜ消えたのか
動画共有サービスの登場が最初の転機だった。作品を自分のサイトに置いて 帯域を負担する必要がなくなり、視聴も投稿も一箇所で完結するようになると、 個人が「倉庫」を運営する意味が薄れた。 再生にプラグインが要らない形式が普及したことも大きい。 決定的だったのはスマートフォンである。携帯端末で Flash が動かない環境が主流になり、 Flash で作ることは「見られない層を大量に切り捨てること」を意味するようになった。 そして 2020年12月31日、Adobe が Flash Player のサポートを終了した。 発表は2017年、Windows Update 経由ですべてのブラウザから削除され、 以後は既定でコンテンツの実行がブロックされている。 ここで起きたのは、作品が消えたのではなく再生手段が消えたということである。 ファイル自体が手元に残っていても開けない。 形式に依存した表現が、その形式の寿命とともにまとめて閲覧不能になるという事態を、 最も大規模に起こした例といえる。
今でいうと何か
短尺動画の投稿。ただし当時は自分のサイトに置いて自分で帯域を持つ必要があり、 再生数も推薦もなく、見つけてもらう手段はリンクとクチコミだけだった
※ 完全に同じものではありません。機能や文化の系譜として近いものを挙げています。