2008年7月11日
iPhone 3G 日本発売
2008年7月11日、iPhone 3Gが日本で発売された。日本の携帯Webがおよそ10年かけて作り上げた 「専用の画面・専用のコンテンツ・通信料と一緒に集める課金」という仕組みを、 外側から迂回する端末が入ってきた日である。
この前後で何が変わったか
これより前
日本の携帯電話でインターネットを使うということは、携帯向けに別途作られた画面を見ることだった。 表示できる文字数が限られ、パソコン向けのページはそのままでは開けない。 サイトを作る側はパソコン用と携帯用を別々に用意し、 コンテンツは通信事業者の公式メニューに載るかどうかで到達できる人数が変わった。 料金は月額数百円をパケット料金と一緒に集める形が主流で、 この仕組みの上に着メロ、占い、待受画像、ゲーム、ケータイ小説といった産業が立っていた。 2008年末の時点でも、モバイル端末からインターネットを使う人は7,506万人。 この巨大な市場は、パソコン向けのWebとは別の規則で動いていた。
これより後
発売は7月11日(金)の正午から。旗艦店では同じ日の朝7時から先行販売が行われた。 端末そのものより効いたのは、そこに付いた条件である。 利用者は「パケット定額フル」(月額5,985円)への加入を必須とされた。 つまり、どのページをどれだけ見ても料金が変わらない状態が最初から前提になっている。 公式メニューに載っているかどうかで通信料が変わらないなら、 公式と非公式を分ける意味は薄くなる。 販売元の資料は、この端末で「Webフルブラウジングはもちろん、動画サービスや地図サービス等を、 通信料金を気にすることなく」使えると説明し、 パソコンのように自由なインターネットの世界という言い方をしている。 この一文は、それまでの携帯Webが「パソコンのようではなかった」ことを、 提供する側が認めた表現でもある。 変化はすぐには数字に出ない。2008年末の統計では、 むしろパソコンからの利用者のほうが大きく伸びている(442万人増に対しモバイルは219万人増)。 入れ替わりは翌2009年で、モバイルが504万人増、パソコンが259万人増となった。 日本の携帯Webは、この端末に負けたのではない。 専用に作り込むほど有利になる構造そのものが、定額と汎用ブラウザによって効かなくなった。 10年かけて最適化した資産が、そのまま重荷に変わる形の交代だった。